試用期間中に解雇を通告されたときに取るべき行動とは?
試用期間中に「あなたを解雇します!」と通告された場合、あなたはどうしますか?
「すごいショックだ・・・立ち直れない」
確かにいきなり言われたらショックですよね・・
「まあ、試用期間中だから仕方ないよね・・・」
本採用ではなく、あくまで「お試し期間」なので一方的な解雇通知もやむ得ない、と考えている人も多いのではないでしょうか?
ちょっと待って下さい!!
試用期間中であっても、本採用後と同様に、正当な理由がなければ会社は労働者を解雇できないのです。
また、様々な権利も法律によって保証されています。
試用期間中に解雇通知された場合、どのように対処し、解雇を受け入れるのであればどのように次の転職活動につなげていくか、一緒に見て行きましょう。
目次
試用期間中の解雇が認められるケースとは?
試用期間中に解雇が認められるケースとはどんな場合でしょうか?
自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇
以下の理由で試用期間中にクビになる人は自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇であり、会社都合の解雇とは言いません。
- 遅刻や無断欠勤を繰り返し、再三注意しても是正できない
- 著しい業務への怠慢・不履行がある
- 勤務中に違法行為を行った場合
- 履歴書に嘘偽りがあり、業務に必要とされる資格・技能が満たされていない
うーん、こういった理由であれば分かる気がする・・
はい、そうですよね。
ただ、あなたが知りたいのは、グレーなイメージがある、「能力不足」や「会社都合」による解雇通告ではないでしょうか?
この「能力不足」「会社都合」による解雇について詳細を見て行きましょう!
試用期間中の解雇パターン1:能力不足
能力不足で解雇を通知されてしまう、という事は本当に適法なのでしょうか?
労働契約法16条には,次のような規定があります。
「解雇は,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合は,その権利を濫用したものとして,無効とする。」
ところで,同法16条の(a)客観的合理性と(b)社会通念上相当性という要件は,甚だ抽象的で,それだけでは,どのような場合に解雇が無効となるのか,使用者にも労働者にも判然としません。かかる意味で,条項としては予測可能性が低く,規範としても弱いといわざるを得ません。
この点について,使用者からの普通解雇の効力については,これまでのいくつもの裁判例の集積によって,使用者には相当厳しい要件として確立していると考えられています。
誤解を恐れずにいえば,長期の無断欠勤や業務上横領等といった明確な債務不履行はともかく,能力不足や協調性の欠如など,もともと債務の不完全履行に関する類型の主観的な要素を含む解雇事由に関しては,これらの事由に加え、指導しても改善やその意欲に乏しいことが,資料や証言によって証明(厳格な事実の証明)できないと,容易に解雇の有効は認められないといえるでしょう。
引用元:「労働契約法」
要約すれば、能力不足を理由に解雇するためには、
- 明確な解雇理由を証拠を持って提示できる事。「協調性がない」「能力が低い」などの主観的な言質では不可。具体的に業務が遂行できない事を客観的データで提示しなければならない。
- 何度も指導や改善を行い、それでも業務の遂行が困難な場合
に厳しく限定されている、と言ってもよいでしょう。
このように、試用期間であっても、正当な理由がなければ解雇は不当な会社都合による解雇で、その解雇する権利は厳しく制限されている事をぜひ忘れないようにしましょう。
試用期間中の解雇パターン2:会社都合
残念ながら、勤務態度や能力は申し分ないが、会社の都合によって、使用期間中にクビになる人がいます。
具体的には、
- 会社が倒産の危機にあるため、やむ得ず人員整理をしなければならない場合
- 災害などで工場・事務所が壊され、業務が継続できない
もちろん、経営者側にはそれ相当の努力が求められ、「何をしても無理!」となった場合に初めて人員整理に手をつける事ができます。
試用期間中において、「会社都合」であっても、その解雇する権利はやはり厳しく制限されている、と覚えておきましょう。
試用期間中の解雇「14日ルール」を知ろう!
試用期間中の解雇について、試用開始日から14日経過しているか否かで、手続きが違う事をご存知でしょうか?
14日経過以降
試用開始日から14日以上経過している場合、解雇予定期日の30日前までに「解雇通告」を行わなくてはなりません。
これは通常の正社員と同じ扱いになります。
そうしない場合、残りの日数分の給与を「解雇予告手当」として支払わなければなりません。(労働基準法20条より)
<例>
試用期間20日が経過して、10日後の解雇を通告された。
→30日-10日で20日分の「解雇予告手当」を日割り計算で、労働者に支払う。
14日経過以内
試用開始日から14日以内の場合、即日の解雇通告でも解雇可能です。(労働基準法21条より)
ただ、解雇理由については、前述のとおり(労働基準法16条)厳しく制限されています。
このように、試用期間中であっても14日以内か以降かで、かなり待遇が違う事を理解しておきましょう。
試用期間中に解雇を通知された場合の対処法~転職まで
ここでは、はからずも試用期間中に解雇を通知されてしまった場合の対処法から転職での注意点などを、順を追って説明していきます。
「解雇通知」に不満があれば、外部機関に相談する
前述したように、試用期間内であってもそう簡単には「解雇」する事はできません。
特に解雇理由が「仕事に向いていない」「やる気が感じられない」などの不確かなものであれば、一度外部機関に相談するのもよいでしょう。
辞めるにしろ、とどまるにしろ、適切なアドバイスを受けて進めるようにしてみましょう。
<労働基準行政の相談窓口>
試用期間中の解雇を受諾する場合でも給与計算はしっかりと
「解雇された・・」となると、給与の事などすっかり忘れたかのようになってしまう事があります。(会社側もそれほど積極的でないので)
しっかりと働いた分の給与はもらって会社を辞めるようにしましょう!
要点を以下にまとめます。
- 月給でも、端数分は「日割り計算」をしっかりと行う
- 30日を待たずに解雇される場合は「解雇予告手当」を忘れない
- 時間外労働があれば、「残業代」として加算できる(試用期間だから残業代が付かないという事はありません!)
もし、給与関係でもめるようであれば、前述と同様に外部機関に相談するのもよいでしょう。
転職活動で、履歴書に試用期間中の解雇を記載すべきか?
試用期間中に解雇された場合、転職の際、その事を履歴書等に書いた方がよいのでしょうか?
できれば、書きたくない・・
はい、とってもよく分かりますが、実は履歴書に詐称がある場合、解雇の理由になってしまいます。
不利な事を書きたくないのは人情ですが、会社がその気になれば、社会保険や雇用保険の履歴から前職がばれてしまいます。
ですので、もちろん会社都合の解雇であれば堂々と言えばよいですし、「能力不足」判定であっても、自分なりの反省や前向きな態度を見せる事がとても重要です。
試用期間中の解雇はあまり深追いしないで次のステージへ
試用期間中に解雇されてしまう事は、ショックですし、不当な「能力不足」判定には怒りもこみあげてくるでしょう!
あの会社許せない!!裁判だ!
その気持ちとってもよく分かります。
ただ、多大な費用と時間をかけて裁判に勝って「解雇無効」を勝ち取ったとします。
その後、本当にその会社で安心して働けるのでしょうか?
むしろ、その怒りを前向きに「転職活動」や「スキルアップ」に使った方が得策ではないのでしょうか?
試用期間中の解雇はこちらの傷も浅く済みます。
むしろ、合わない会社とはさっさと別れて、自分のスキルや能力を活かせる職場を探してみてはいかがでしょう!
試用期間中に辞めたい、解雇されたい場合の対処法
逆に試用期間中であっても、パワハラ・セクハラがひどい、残業時間が半端ない、などの理由で「解雇されたい!」「クビになりたい!」という事があります。
そうした場合は、以下の記事をぜひ参考にしてください。
試用期間中に退職したい!と思ったら知っておくべき手順、転職の方法
試用期間中に解雇を通告されたら転職エージェントに相談を
試用期間中に解雇を通告されたら、ぜひ「転職エージェント」に相談してみましょう。
不当な解雇なのか?の相談から、退職の仕方、もらうべき給与の計算、履歴書の書き方、面接での適切な退職理由の述べ方まで、レクチャーしてもらえます。また、適切なマッチングで今度こそあなたにピッタリな職場が見つかる事でしょう。
試用期間中に解雇を通告される事は、ショックですが、人と人との出会いと同様、相性が悪い事もあります。
むしろ、傷口は浅く「数か月でよかった・・」と将来思えるのではないでしょうか?
そう思えるような素敵な会社に出会える事を願っています。
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